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タテルッチのこと

建築写真セミナー

2024/6/14

LIXIL福岡ショールームで開催された建築写真撮影講座を受講しました。

以前から住宅撮影に関するコラムなどを読んで参考にさせていただいていた「家撮り部」のプロのカメラマンさんによるセミナーの開催を知り、オンライン参加ではなくぜひ現地で参加したい!と、すぐに申し込みをしました。

講座は、座学と撮影実践の2部構成で、座学では「水平、垂直」という建築写真の基本的なことから、画角の切り取り方、何をどう撮るか、というポイントまでとても丁寧に教えていただきました。楽しみにしていた撮影実践では、実際にショールーム内を撮影しながら、プロの方が撮影の際にどこを狙って、どのように撮影するか、気をつけるポイントなど丁寧に教えていただきました。今回はスマホでの撮影講座ということで、講師の方も同じiphoneで、広角やズームを使わず撮影していて、同じ条件で、同じように撮影したはずが、私が撮った写真と比較すると違いは歴然で、改めてプロの方の技術力の高さを感じたセミナーでした。

中でも印象的だったのは、建築写真を撮影する際、大切なのは【生活の動線を意識した写真を撮ること】というお話でした。【生活動線を意識した写真】つまり部屋と部屋、空間のつながりを意識して撮影することで、その家で生活するイメージをより的確に伝えることができるというお話は、私の中では全く新しい視点でした。これまでの私の撮影は、完成した住宅をいかにかっこよく、魅力的に見せるかという部分に重きを置いていて、撮影の際はどう撮るべきかいつも迷いがありました。

今回のセミナーでは、実際にショールーム内の各コーナーで撮影しながら、狙うべきポイントや入れるべき壁面など、より具体的に教えていただくことができ、たとえ狭い画角でも伝えたいポイントを的確に画面内に収めることで、より伝わる写真になるということを体感することができました。

また、講師の方のお話の中で「完成写真を撮影する際は必ずお施主様のこだわりや住まい方を取材しています」という部分は、今後撮影に伺う際に大切にしなければいけないポイントだと資料に何度もラインを引きました。完成写真の撮影の際は事前にお施主様のお話を伺って、その方の生活動線やライフスタイルをイメージし、その上で、撮影するべきポイントや時間帯を決めて撮影しているのだそうです。

日頃は完成してから引き渡し直前のわずかな時間で撮影に伺うことが多く、お施主様や工務店様からゆっくりとお話を伺うことができないのですが、以前、渡邉工舎様の現場で、お施主様のご厚意で色々とお話を伺いながら撮影するお時間をいただいたことがあり、ご家族がこだわった部分、こんなふうに暮らしたいという想いをお話ししていただいたことがありました。私自身の目線で素敵だと感じた部分だけでなく、お施主様のお話を伺った後で撮影すると、構図に迷いがなくなり、伝えたい部分を切り取るための画角を考えることに集中できたことを思い出しました。

もう一つ、印象に残っているのは、建築写真の構図を決める上で大切にしているのは、写真の中に人の気配を感じるような「佇まいを意識した」撮影を心がけているということでした。その家で暮らす人のイメージが伝わるような写真を撮ることはtaterucchiのサイトを通じて、地元の工務店様の家づくりを伝えたいという想いにつながるような気がして、「佇まいを意識した撮影」という言葉を忘れずに、これからもっと撮影の技術をレベルアップしていきたい!と感じたセミナーでした。

 

そんなセミナー受講の直後という絶好のタイミングで、セミナー翌日、今冨建築様の新築現場に撮影に伺うことができました。とてもありがたいことに今冨社長とお施主様から間取りやインテリアについてのお話しや、施工中、急遽階段と廊下の間の壁に小窓を開けて欲しいとお願いして作ってもらったお話など伺いながら撮影することができ、セミナーで学んだことを思い出しながら撮影を進めました。

とても和やかにお話しいただきながら撮影を進めていたのですが、その際、お施主様から何度か「畳の部屋はもう撮影しましたか?」と気にかけてくださっていました。「最後に撮影します」とお伝えしてから他の部屋の撮影を終え、最後に「今から畳スペースの撮影をします」とお声がけしたところ、お施主様から「この畳は七島藺(しちとうい)なんですよ」とお話ししていただきました。

「他の部分は今冨さんにお任せします、と言ったのですが、畳だけはこだわりたくて」と、現在、国東地方だけで生産されている七島藺のお話をしてくださいました。七島藺の畳について、国東で生産されていることや手間がかかる貴重なものだという話は聞いたことはあったのですが、実際に使われている現場にお邪魔したのは初めてで、お話を伺っていると、地域の財産として七島藺を大切にしたい、伝えたいというお施主様の想いが伝わってきて、大切に撮影しなくてはという思いで撮影に臨みました。お施主様の想いを知ると、画角や構図がガラリと変わってくるということを実感した撮影でした。

また、こちらのお宅では、LDKの一角にお仏壇を設置するための床間がしつらえられていて、手前には埋め込み式の畳スペースがあり、リビングと和室が一体になったような空間になっています。間取りについてはお施主様のご希望だったのか伺うと、昔ながらの仏間と客間のように、普段使うことがない部屋にするのは嫌だと思っていたところ、今冨社長がリビングの一角にこの空間を作ることを提案されたそうです。眺めがよくご家族が集まるこのリビングで、亡くなったお父様も家族と一緒に過ごせているような気がして嬉しいとお話してくださいました。

性能や機能だけでなく、そこで暮らす方の想いに寄り添った上で間取りやデザインを提案することができるのは、長年、この地域の家づくりを担ってきて、暮らしや生活を知る工務店だからこそではないかと思います。

大分県北エリアでのご新築を考えているお施主様に、地元の工務店がどのように家づくりをしているか、お施主様がどんなふうに暮らしているか、そんなことを伝えたいという思いで立ち上げたtaterucchi(タテルッチ)。

カメラ歴はだいぶ長くなったけど、まだまだアマチュアの域を抜けきれない発展途上の私ですが、それぞれのお施主様の大切な家を撮影させていただく時に、今回のセミナーで学んだことを大切に思い出しながら撮影に臨みたいと思った2日間でした。